平成4年度は、理学部移転に伴って数値計算の為の環境が一時的にしろ悪化した事もあり、大統一模型の中での繰り込み群による弱電磁相互作用対称性の破れの特に解析的な分析に重点をおいた。大統一模型としては、通常のSU(5)模型、それを超対称化した最小超対称性模型、さらにいくつかの自由度を加えた模型等を考え、繰り込み群による解析を検討した。非常に階層的なカイラル対称性の破れの構造が実際に自然な形で導かれているかどうかにはかなり問題点が残っている事がわかった。 特に、超重力理論により「隠れた部分」からの超対称性の陽な破れの項の評価、それからの「普通の部分」を支配する繰り込み群への影響などを調べた。これらの繰り込み群方程式が、プランク質量のスケールを起点として、弱電磁相互作用の破れのスケールを決める論理、超対称性の破れのスケールとの関係、繰り込み群の初期条件として導入される超対称性の陽な破れの項目の妥当性等がポイントである。 弱電磁相互作用の自発的破れにおいては、今後の加速器計画(ヨーロッパCERNのLEP2計画、アメリカのSSC計画、そして日本のJLC計画)でのトップクォーク及びヒッグス粒子の発見とその性質の解明が、現象論的には焦眉の課題である。これらの新しい粒子の性質、特に質量の従来よりも精確な予言のために、くりこみ群による有効ポテンシャル評価の改善方法を検討し、正しく大対数項を足し上げる処方と質量を評価する処方を採用して、研究室のワークシテーション上で現在数値計算を進めている。 以上は、無限次の項の足し上げによる摂動論的計算の改善に属するが、むしろ、素粒子模型の新しい展開につながる様な非摂動的なくりこみ群の評価が重要と考えている。その方法は未だ開発途上であるが、我々は、実の連続な時空上でのウィルソン型のくりこみ群方程式を離散化して、非摂動的な評価を行う事をめざして準備している。
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