1.大きな階層性を伴ったカイラル対称性の自発的な破れは素粒子論の中心的な課題である。摂動論にもとずく解析はこれまで種々行われてきたが、素粒子論に於いては高エネルギーあるいは低エネルギー領域で必ず強い相互作用を含まざるをえず、摂動論にのみ頼っていては広いエネルギーレンジにわたる計算の信頼度は上がらない。 2.そこで今年度は、場の理論の強力な解析方法であるくりこみ群を非摂動論的に定式化して、そのくりこみ群方程式を調べた。系の作用を有限多項式有効ポテンシャルで近似して具体的な方程式を書き下した。この近似の有効度を調べるために、比較的簡単なヒッグススカラーのみの系に適用し、固定点構造及びcritical exponent等の物理量を計算して、他の計算方法による結果と比較した。 3.相互作用空間を場の多項式として次数の低い方から3次元(2次、4次、6次)に限ったいわば最小限の空間での計算結果は、時空次元が3から4に渡って極めて良い結果を出す事がわかった。くりこみ群方程式には、いわゆる摂動論的なガウシアン固定点に加えて、非摂動論的な臨界を表す固定点が存在する。特に、この強磁性型相転移に伴う臨界指数はモンテカルロ計算の結果とよく一致している。また、ε展開によって予想されていた、時空次元を3から4へ動かした時の固定点の連続的な動きが再現された。この様な比較的大胆な近似が極めて良い結果を与える事は驚きであるが、この方法に従って近似を系統的に改善していく事によって、場の理論の非摂動論的な振るまいが捉えられる可能性が見えたと考えられ、近似の改善に現在取り組んでいる。
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