本年度はまず、ワークステイション(WS)の導入を行い、これまでは大型計算機センターでしかできなかった本格的科学計算をWS上に移行し、どれだけ実際に使い物になるかを調べることが一つの目的であった。最初に予定していた平均場近似の範囲内でのStrutinsky計算のほぼ総てのプログラムの移植はほとんど問題なく行われた。また、WS自信の稼動状況も極めてよく、今までのところハードウエア上のトラブルは発生していない。問題の性能についても、ほぼカタログどうりの性能を発揮しており、現在の九州大学大型計算機センター(FACOM・M-1800)の1/2〜1/3の速さで計算が遂行でき、十分所期の目的は達していることがわかった。 物理の面では、このWSの高速性を活かして、これまで大型計算機センターでは経済的理由でできなかった、系統的なテスト計算を行うとともに、これまで稼動していたNilssonポテンシャルの計算だけでなく、より現実的な(従ってより計算時間のかかる)Woods-Saxonポテンシャルを用いたStrutinsky計算が可能となり、そのプログラムがほぼ完成しつつある。これらの計算を通して、現在特に多くの実験データが蓄積しつつある質量数が150及び190近傍の原子核の超変形回転バンドの分析を行った。特に、どちらの領域でも対相互作用を高次まで取り込むことが重要であり、この対相関の効果が両領域で異なっているために超変形状態をもたらすエネルギー曲面が角運動量と共に変化する様子がかなり違っていることが分かった。このことは、これら二つの原子核の領域で超変形回転バンドの生成・崩壊の様子がかなり異なっていること、特に、質量数190領域の核で崩壊の起きる角運動量がかなり小さく、かつ、崩壊がより急激の起こっているように見えること、を説明する有力な可能性であり、引き続き検討を行っている。
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