本年度は、昨年度導入されたワークステイション(WS)を本格的に使用し、これまでは計算時間がかかりすぎるために大型計算機センターではできなかった多くの原子核にわたる種々の系統的計算を遂行した。 本研究の目的の一つである、新しい領域での超変形状態としては、現在実験にかかっている原子核の近傍にもまだまだ観測される可能性があるものが数多く見つかった。現在、より軽い核(質量数が80-130)での超変形回転バンドについても分析を進めているところである。また、新しいより大きな巨大変形状態として最近、発見された^<152>Dyの状態についても新しく開発したWoods-Saxonポテンシャルを用いたStrutinsky計算により分析を行い、その可能性について調べることができた。 昨年度から継続して分析を進めている、多次元トンネル現象としての超変形回転バンドの崩壊の問題についても、質量数が150近傍及び190近傍の両領域での系統的計算により、これら二つの原子核の領域で超変形回転バンドの崩壊についての相異なっている点と同様な点とをかなり明確に同定することができた。また、同一の核で2つ以上の超変形回転バンドが観測されている例についても、基底状態だけでなく、励起状態についても計算を行うことによりどちらが速く崩壊を起こすかについて調べることができた。しかしながら、最近蓄積されたデータによって出されている、超変形状態の内部構造によって崩壊のパターンが分類できるという報告については、本研究の計算では必ずしも明確にそのことを支持する結果は得られなかった。この点については引き続き検討を進めるつもりである。
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