本研究の目的は、巨大変形・高速回転の極限状態における原子核構造の種々の様相を統一的な理論的枠組みを用いた系統的な計算によって明らかにすることであった。このためには多くの大規模数値計算が必要でありこれまで大型計算機でしかできなかったが、新たに低価格のワークステイション(WS)を導入し、これを占有することによりこれらの計算を遂行するものであった。 昨年度は主として大型計算機で稼動していたプログラムをUNIXのWSに移植し、多くのテスト計算を行い、大変満足のゆく性能が出ておりCPU負荷の重い科学計算でも十分使えることを確認した。本年度は、これを踏まえてWSを本格的に使用し、これまでは計算時間がかかりすぎるために大型計算機センターではできなかった多くの原子核にわたる種々の系統的計算を遂行した。 これにより、新しい領域での超変形状態(superdeformation)としては、現在実験にかかっている原子核の近傍にもまだまだ観測される可能性があるものを数多く見つけた。また、新しいより大きな巨大変形状態として最近、発見された^<152>Dyの状態(heyperdeformation)についても新しく開発したWoods-Saxonポテンシャルを用いたStrutinsky計算により分析を行い、その可能性について調べた。また、超変形状態上に期待される新しい素励起モードとして低励起エネルギーで集団性の高い八重極振動モードが存在する可能性を示しその性質を調べた。さらに、昨年度から継続して分析を進めている、多次元トンネル現象としての超変形回転バンドの崩壊の問題についても、質量数が150近傍及び190近傍の両領域での系統的計算により、これら二つの原子核の領域で超変形回転バンドの崩壊についての相異なっている点と同様な点とをかなり明確に同定することができた。
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