研究概要 |
1.核内弱核子流のうち誘導ギスカラー項の強度を決定するに有効な観測可能量として次の5種が考えられる:陽子によるミュー粒子捕獲率核によるミュー粒子捕獲率.輻射を伴うミュー粒子捕獲現象における諸観測量.ミュー粒子捕獲後の反跳核の偏極.ミュー粒子原子の2つの超微細構造状態よりのミュー粒子捕獲率の比. 2.陽子におけるミュー粒子捕獲率は,陽子の分子状態の物理に関する知識の不確定さが,誘導ギスカラー項の強度決定の精密さを減少させている.核の場合もまた核の波動関数が,強度の精密決定をさまたげている.輻射を伴うミュー粒子捕獲の場合は,誘導ギスカラー項の強度決定に有効であるが,輻射なしの場合に比較して数10万分の1と小さい.残る2量を我々は更に調査することにした. 3.^<12>Cによるミュー粒子捕獲が起ると,原子核は^<12>Bに変換し,ニュートリノが放出される.この場合の^<12>B核の縦偏極および平均偏極の比Rは,原子核モデルの変動内容は不確定さに比較的依存しないので,我々の目的にかなった量である.しかも,アクシャル・ペクトル流の時間成分が,ペータ崩壊の実験より決定できるので,これを再現できる核モデルを採用できる.このようにして求めたモデルを用い,Rを分析することによって,誘導ギスカラー項の値を求めることができた.ベータ崩壊の新しいデータを用いた分析が近く実行される. 4.重陽子のミュー粒子原子における2つの超微細構造状態が,ミュー粒子を捕獲しニュートリノを放出する反応において,捕獲率が誘導ギスカラー項の強度に著しく依存すること,しかも交換流の詳細に殆んど依存しないことを証明した. 以上は裏面の論文のように,国際会議等で発表された.
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