研究概要 |
GaAs-AlGaAs超格子フォトカソードにより得られた電子の偏極度71%をさらに改善するために、平成4年度には超格子フォトカソード内での減偏極の起こる機構の解明のための研究を行なった。超格子フォトカソードの超格子部の厚さ・ドーピングの密度等を変えたいくつかのサンプルを作り、その偏極度を測定し、以下のことが明かとなった。 (1)フォトカソードの表面のドーピングの密度を従来の値に保ちながら、内部のドーピングの密度を下げることにより量子効率・偏極度ともに高い超格子フォトカソードを作ることができる。 (2)偏極度の超格子厚さ依存性より、内部の減偏極がない状態での偏極度は75%程度であると推測される。これは減偏極は表面で起きているか、もしくはそもそも超格子フォトカソード内で励起された電子の偏極度が、バンド混合等の理由により75%程度になっていると考えられる。そのため表面の構造の違ういくつかのサンプルを作りテストしたところ偏極度の改善は見られなかった。いまのところ表面での減偏極のみによって25%もの偏極度の減少が起こっているとは、考えにくい。 以上の結果は、Nuclear Instruments and methods in Physics Research誌上(A313,1992年,No.3,page393-397)に発表された。また平成4年7月にドイツ連邦共和国・ハンブルグで開かれた、「第15回高エネルギー加速器国際会議(HEACC92)」、および同年11月に名古屋で開かれた「第10回高エネルギースピン物理国際会議(SPIN92)」において発表された。
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