本年度は、前年度に作製した液体シンチレータの特性の測定を行なうとともに、このような液体シンチレーション検出器を、実際の実験に用いることができる程度に大型化した場合に、期待される種々の特性について検討を行なった。 後者では、具体的には、100トン程度の質量の液体シンチレータを透明容器に封入し、光電子増倍管を周囲に配置した検出器を想定し、内部で起こる現象を計算機によってシミュレーションし、その現象の再現性を調べ、検出器の性能を予想した。計算コードは、電磁シャワーに対しては評価の定まったEGS4(米国スタンフォード加速器研究所の開発)を利用したが、他の部分については新たに開発した。 このシミュレーションは、本研究の主題である炭素13を含むものだけでなく、一般の液体シンチレータに対して有効である。大型の液体シンチレーション検出器は、いろいろな物質を含ませることによって、太陽ニュートリノのみならず、二重ベータ崩壊現象など他の希少現象の観測にも有用であると指摘されていることからもこれは大きな意味がある。このような観測では、発光量の多いシンチレータによって得られる高いエネルギー分解能と、材質の純化によるバックグラウンドの低減が実験の鍵を握っている。本研究によって、十分にバックグラウンドの現象が抑えられれば、探すべき現象の信号が観測可能であることが示されつつある。
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