研究概要 |
本研究で対象とする物質は準二次元有機伝導体(BEDT)_2KHg(SCN)_4である。この有機錯体は1K以下の極低温まで二次元的金属であるが約10Kで常磁性金属から反強磁性的金属へと相転移することを,約3年前私共のグループが観測した。本年度はこの研究を更に発展させるべく次のような研究実績を得た。 1.低温(0.4kまで),強磁場(28T)での電気伝導および静磁化の測定によりこの物質の磁場温度相図を決定した。磁場中電気伝導における異常な振舞より,H_A=23T以上の磁場で再び常磁性的状態へと転移すること,およびそれ以下の磁気的秩序相と考える状態が2つの異った磁気秩序から成り立っていることを明らかにした。 2.この磁気相図を更に詳しく調べるために静水圧を印加する装置を設計,その大部分は完成し現在これの種々のテストの準備をしている段階である。 3.比熱測定はこの物質の磁気秩序の本性を解明するために有用な手段である。本年度は,ミリグラム程度の微小単結晶の比熱を測定すべく装置の開発を行った。まだ完成していないが本年度これを用いた実験を期待している。 来年度は,上記2.3.の実験を行ないこの物性の異常な磁気秩序相の起源に追りたい。
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