平成4年度の科研費によって導入した10T超伝導磁石によるdHvA効果の測定系を完成させた。これによって1.3K、10T域でのdHvA効果の測定が可能となった。これまでは5Tの磁場に限られていたので、測定精度・内容が飛躍的に向上した。しかし研究を進める段階で、より低温での測定が要求され、現在3Heを用いたクライオスタットの開発を進めている。平成6年度には、0.4K、10Tの超低温、超高磁場下でのdHvA効果の観測が可能になる。 この新しい測定系によってSmGa2、PrGa2及びそれらの参照物質であるLaGa2の強磁場におけるdHvA効果の測定を精力的に行い(1)LaGa2、SmGa2、PrGa2等のフェルミ面が類似すること、(2)SmGa2では常磁性状態と反強磁性状態のフェルミ面は異なること、(3)メタ磁性転移にともなって電子系に交換相互作用が誘起されること等を明かにした。しかし詳細なdHvA効果のスペクトルの解析は、フェルミ面の類似性に疑いをもたらした。LaGa2のフェルミ面はc軸及びa軸方向に多重連結しているが、SmGa2においてはこの連結を保証するc軸方向のフェルミ面(δ軌道)が観測されず、又磁気抵抗の結果もフェルミ面の連結性の破れを支持した。 この問題を解決するために物性研や東北大金研にて24Tまでの超強磁場下でδ軌道の観測を試みた。しかし、δ軌道の観測は困難であった。この結果は、フェルミレベル直上にあるSm2+状態がs-f混成効果を引起こし、δ軌道の電子が10倍程度の質量増強を起こすことを示唆しており、興味深い問題を提起した。今後mK領域での観測を行い、問題解決を図る。 磁性については、RGa2が示す磁気変調構造の原因として、フェルミ面のネスティング効果が重要であることが判明した。 尚当初は重希土類化合物のフェルミ面の観測を行う計画でいたが、研究途中で派生した問題の解決図るため、敢えて計画を変更した。重希土類化合物については今後の研究対象としたい。
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