研究概要 |
本研究は偏歴電子による磁気モーメントの大きさが伸縮可能であることを考え、特殊な磁気構造のもとで磁場によって磁気モーメントを消失させる可能性を検討するものである。本年度はラーベス相フェリ磁性化合物Er_<rx>Lu_xC_<o2>を試判として強磁場下の研究をおこなった。その結果以下のような結果が得られている。 1.NMR、熱膨張の実験からE_<e1-x>L_<ux>C_<02>のC_oモーメントが消失する組成領域を調ベた結果、x=0.4でほとんどのC_oは非磁性となる。 2.0.2≦x≦0.4の組成の強磁場磁化を測定したところ、0.225≦x≦0.3でブロードなメタ磁性を観測した。この転移はあきらかにC_oモーメントの強磁場下での消失を示している。転移磁場はxが小さくなる程大きくなり、この傾向も我々の考えを支持している。このような偏歴電子磁気モーメントの強磁場下における消失が観測されたのは、初めてのことであり、結果はさっそく速報としてアメリカのPhys,Rev,Lettに投稿した。 3.現在Phys,Rev,Lettからはレフェリーのコメントがついてきており、不純物相の可能性を植摘されている。我々はそこでわざと不純物を含んだ試料を作製して測定をおこなったが、不純物はむしろメタ磁性転移をブロードにする方向に働らき、メタ磁性の原因とはならないことがわかった。 4.本研究の結果をもとにして東大物性研とErCo_2(x=0の場合)の超強磁場下の磁化測定をおこなったところ、約53Tでメタ磁性がみられた。この結果は我々の予想値46Tとほとんど一致しておりC_oモーメントの消失はもはや疑いのない結果となった。 5.ErC_<Co2>は異方性がつよいため、メタ磁性をおこしてもその転移はブロードになる可能性があり、現在コンピュータシミュレーションをおこなって調ベている。
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