研究概要 |
本研究は遍歴電子磁性体において不安定な磁気モーメントに着目し,特に磁場(外磁場または分子場)によって消失させる可能性を追求したものである. 1)Er_<1-x>Lu_xCo_2の強磁場によるCoモーメントの消失 上記化合物中ではCoモーメントはErからの分子場によって誘起されている.またフェリ磁性であるために外部磁場はCoの分子場と反平行になる.したがって外部磁場の増加にともない,Coの受ける有効磁場は減少し,ある臨界値を越えたところでCoのモーメントは急激に消失することが期待される.我々は前年度までの結果で確かにx=0.25の組成においてブロードなメタ磁性的振舞を観測し,それがCoモーメントの消失によるものであることを提唱した.本年度はさらに体積磁歪の測定を行い,メタ磁性の生じる磁場で体積が大きく減少することを見いだした.一般に遍歴電子磁性体では磁気モーメントが発生すると体積が膨張する.従って我々が観測した体積の収縮は明らかにCoモーメントの磁場による消失を支持している.また我々はメタ磁性転移磁場の組成依存性からErCo_2(x=0)の転移磁場が46T付近であると予想したが,実際,東大物性研での共同研究により,ErCo_2の磁化過程が53T付近で異常を起こすことを見いだした. 2)Sc_<1-x>Ti_xFe_2Hf_<1-x>Ta_xFe_2の熱的,電気的性質 これらの化合物ではFeが2種類のサイト(6hと2a)を占める.このうち2aサイトのFeは,xの組成を変えることにより分子場が変化するので,ある組成でモーメントを消失する.これらの化合物の熱的電気的性質を調べた.その結果いずれの化合物でも2aサイトのFeのモーメントが消失するところで電子比熱係数や電気抵抗のT^2の係数が大きくエンハンスされることを見いだした.またその結果はスピンのゆらぎの理論で理解されることを示した.
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