研究概要 |
半導体中に生成された高密度電子正孔プラズマが試料中をどのように広がっていくかを観測し、拡散の機構を解明するのが本研究の目的である。我々はGeとGaAsに対して実験を行った。Geに対しては遠赤外磁気光吸収を通してプラズマの非常に速い膨張にともなう自由励起子の速い拡散を観測した。さらにこの励起子の拡散速度が磁場により減少することを見出し、プラズマの膨張が磁場によって押えられることがわかった。一方GaAsに関しては電子正孔プラズマを測定する可能性のある光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の実験装置を作成し共鳴信号を測定した。 Geは厚さ0.4mmの試料を用意し,まずフォトルミネッセンス観測を行った。この結果薄い試料では表面再結合のため、励起子濃度の上昇が押えられていることがわかった。さらにこの試料について遠赤外吸収を行い励起子によると思われる信号を観測した。これは遠赤外光の波長変化により確認をした。これらの知見に基づき遠赤外吸収の時間、空間分解測定の結果を解釈した。遠赤外吸収で観測している信号は自由励起子であり、その拡散速度が磁場の印加にともない急激に減少している。特に零磁場での拡散速度は7×10^3cm/sと速く、高密度プラズマから自由励起子が飛び出しているか,非常に速く拡散するプラズマの後を自由励起子が追随しているかのどちらかであると考えられる。 以上,本年度中に半導体中のプラズマの拡散機構について解明する一歩として、プラズマに付随する励起子の拡散現象を研究し、光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の装置を作り、本邦で初めて信号を測定した。
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