研究概要 |
鉄を中心とした遷移金属合金は各種の実用合金として多方面で重要な役割をはたしているが,特に原子炉や核融合炉に使用される合金材料としては,さらに大きな改良が必要である.ベースとしてはステンレス系合金が現時点で最も重要とされているが,強い放射線,とくに高速粒子線を多量にあびる場合にも,物理的特性の劣化を最小限に抑えることが必要である.本研究ではこれらの実用合金の基礎であるインバー合金について,磁気体積効果による格子間原子のまわりの微小な格子のひずみをX線散漫散乱により検出し,合金材料の物理的特性との関係を調べることを試みた.実験装置として、4軸型X線自動回折装置とクローズドループ型低温クライオスタットを用いて,Fe-Pt,Fe-PdおよびFe-Niの3つの代表的なインバー合金について15Kから300Kまでの温度範囲でX線散漫散乱の温度変化の測定を行った. Fe-34.2at%Pdインバー合金では,散漫散乱は300Kでもともと球形からずれて,(200)面にやや薄い形をしているが,温度を下げて行くとさらに薄くなり,15Kでは円盤の半径が約30%増加した.このような円盤形の散漫散乱を与えるひずみは棒状であり,fccからfctへとマルテンサイト変態を起こすごく初期の原子ひずみが検出されていると考えられる.この微小ひずみおよびFe-Niインバー合金で見つかったシアーひずみは,インバー合金についてこれまでにまだ観測されていなく,本研究によってはじめて明らかにすることが出来た. さらに鉄を中心としたアモルファス強磁性合金について,高速粒子線照射により磁気異方性を変化させることができ,軟磁気特性の改善が可能であることを示し,さらにMnを中心とした金属間化合物について,格子間原子が感じるのと同程度の高圧力を加え,磁化の減少,キュリー点の上昇を観測した.
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