研究概要 |
タンパク質結晶の完全状を評価するために,レーザー光散乱トモグラフによって結晶中に格子欠陥が導入される様子を,成長のその場観察法により観察することが本年度の課題である.水還流型の成長セル中で,あらかじめmmサイズに成長させた卵白リゾチームの斜方晶結晶を非接触法(ガラス基板上で不均一核形成させた方法)で移動・静置させた上で,あらかじめ過飽和にしておいた溶質の析出を待って,成長過程を追跡した.その場観察で問題となる点は,(1)たんぱく質の場合成長速度が極めて遅く,「週」の単位で成長条件を一定にする必要があること,(2)光散乱トモグラフ法の難点である「表面からの散乱」が,成長過程で著しくなること,(3)散乱コントラストが弱いために,表面からの迷光との区別がつきにくいなどがある.したがって,極めて多くの試行錯誤を繰り返したが,斜方晶結晶の,〈001〉方向の成長を速くした条件で,種結晶からひきついだ欠陥像の観察が確認された. 卵白リゾチーム以外のモデルタンパク質として,コンカナバリンA結晶の光散乱トモグラフ像の観察を試みたが,アモルファス相を終えた結晶化のためと考えられるが,結晶粒界が多く,トモグラフ像ならびにエッチピット像も良好な結果が得られなかった。
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