放射光を用いて、低温高圧下でのX線回折実験を行い、圧力および温度を変化させたときの相転移について調べた。低圧結晶相から高圧結晶相への転移およびその逆の転移の他に、高圧結晶相からアモルファス相への転移が起こることを見出した。また、これらの転移の温度‐圧力平面での経路依存性を調べた。 GaSbの高圧相は90Kの低温で減圧すると、低圧までクエンチされる。この高圧相は1GPa以下で昇温したときアモルファス相に転移し、1GPaより高圧で昇温すると常圧相のZnS型結晶相に転移する。また、高圧相を温度一定で減圧すると、270K以下ではアモルファス化し、それ以上の温度では常圧結晶相に転移する。 AlSbでは、同様なアモルファス化が2.5GPaおよび260K以下で観測され、この温度・圧力域以外では、常圧相への転移が観測される。InAs、およびGdTeでは、高圧相から常圧相への転移のみが観測される。 これらの結果を配位座標モデルを用いて解析し、相転移の温度変化から相転移の際に越えるポテンシャル障壁の高さを見積り、その圧力依存性を決定した。GaSbとAlSbでは、高圧相からアモルファス相へのポテンシャル障壁の高さの圧力微係数が常圧相へのものよりも大きいことが分かった。また、ある圧力でアモルファス相と常圧相へのポテンシャル障壁の高さの逆転が起こることを見出し、これによって転移の経路による違いを説明できた。 また、これらの結果を、これまで知られているSiおよびGeの結果とあわせて考察することにより、結合のイオン度が大きくなれば、常圧相へのポテンシャル障壁が低くなり、アモルファス化が起きにくくなることを明らかにした。
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