金属強磁性体はまだ理論的に解明されていない部分が多い。そのなかで、弱い遍歴電子強磁性はスピンのゆらぎ理論によって少数のパラメータで記述できるので、金属強磁性研究にとってよい実験物質である。しかし、いままでの経験によると試料の組成、熱処理等によってパラメータは敏感に変化する。初年度の研究として、不純物効果等の実験を行うもとになる遍歴電子磁性本の信頼できる試料の作成に取り組み、以下の試料の作成と、基礎磁性の測定を行った 1.YNi_5:遍歴電子常磁性体。 2.YNi_3:弱い遍歴電子強磁性体。キュリー温度=33K 3.Y_2Ni_7:弱い遍歴電子強磁性体。キュリー温度=59K 4.YNi_5:遍歴電子常磁性体。 5.Y_2Ni_<17>:遍歴電子強磁性体。キュリー温度=151K さらに、Y‐Ni系遍歴電子強磁性体に局在磁気モーメントを持った原子としてのGdをドープした試料の作成を行った。このGd不純物磁性原子を含む試料の磁化測定から、Gdの磁気モーメントは母体の強磁性磁気モーメントと反強磁性的に結合することが明らかになった。T_2Ni_7にFe原子をドープした試料も作成したが、この場合にはFeの磁気モーメントは母体のNiの磁気モーメントと強磁性的に結合していることがわかった。
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