本年度の遍歴電子強磁性に関する実験および理論解析は以下の通りである。 1.パイライト系遍歴電子磁性化合物に関して、二硫化コバルトCoS_2と二セレン化コバルトCoSe_2の混晶化合物の試料作成を行い、次の組成比の化合物を得た。(a)CoS_<0.20>Se_<1.80>(b)CoS_<0.28>Se_<1.72>(c)CoS_<0.36>Se_<1.64>(d)CoS_<0.40>Se_<1.60>(e)CoS_<0.50>Se_<1.50>。このサンプルについて400kOeまでの強磁場下磁化測定を行い、メタ磁性特性を示すことを観測し、そのメタ磁性への転移磁場として、上記サンプルについて、それぞれ(a)0kOe(強磁性)(b)70kOe(c)150kOe(d)250kOe(e)370kOeの値を得た。 2.イットリュウム・ニッケル系の弱い遍歴電子強磁性に対する局在磁気モーメント磁性元素ガドリニウムの不純物効果に関して平均場近似での解析を行い、実験結果との比較から、局在磁気モーメントによる遍歴電子強磁性への効果は温度依存性に関しては平均場近似でかなり良く説明できるが、磁場依存性に関しては単純に磁場方向の成分だけを考慮したのでは不十分であり、磁気モーメントが傾く効果を取り入れる必要があることが明らかになった。 3.規則秩序合金型遍歴電子強磁性体Au_4Mnの試料を作成し、熱膨張測定を行った。熱膨張の異常及び磁気抵抗の異常温度から強磁性キュリー温度が359Kであることを観測した。この遍歴電子強磁性体にCr元素を導入した場合の不純物効果をさらに進める計画である。
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