研究概要 |
本年度の遍歴電子強磁性に関する実験および理論解析は以下の通りである。 1.パイライト系遍歴電子磁性化合物である、二硫化コバルトCoS_2と二セレン化コバルトCoSe_2の混晶について良質の試料を作成することができた。このなかのCoS_<1.8>Se_<0.2>は低温では強磁性で、温度が上がるとメタ磁性となり、さらに高温で常磁性に転移することを、強磁場磁化測定で明らかにした。さらに強磁性からメタ磁性に移る中間の温度で、磁化曲線が磁場にたいして2段階になる現象を見いだした。いままで、局在型磁性体ではスピンフリップによる転移の例があり、また遍歴電子磁性体では温度誘起強磁性-強磁性転移の例が知られているが、このような磁場誘起強磁性-強磁性転移は遍歴電子強磁性体では初めての発見である。この系の磁性体では常磁性状態では磁気モーメントはもたないことが知られているので、この原因としては、自由エネルギーが磁場の関数として3重の極小をもつことによる現象、あるいはコバルトの周りのセレンの数の違いによる効果が考えられ、両者の場合について検討を行った。 2.イットリュウム・ニッケル系およびZrZn_2の弱い遍歴電子強磁性に対する局在磁気モーメント磁性元素ガドリニウムの不純物効果に関して平均場近似にたいする補正としてスピンのゆらぎを部分的に考慮した解析を行った。 3.規則秩序合金型遍歴電子強磁性体Au_4(Mn,Cr)にかんして、Cr10%および30%の試料を作成し熱膨張測定を行った。熱膨張の異常及び磁気抵抗の異常温度から強磁性キュリー温度が359K(0%)、339K(10%)、276K(30%)とCr不純物濃度とともに減少するすることを実験的に明かにした。
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