研究概要 |
SiO_2ガラス中の低温での力学的緩和現象を4.2-300Kの温度領域で低周波(51kHz)内部摩擦測定により実験的に研究した.pureなSiO_2試料と,一部のSi原子をGe原子で置換した混合ガラス試料(SiO_2-10%GeO_2)について測定を行った.前者では35K付近にブロードな緩和ピークが見られたが、これは従来からよく知られているもので,Si-O-Si結合中の酸素原子の熱活性化過程によるものと考えられている.他方,後者の試料ではピークは更にブロードとなり,高温側(50K付近)に移動した.この試料では,一部の酸素はSi-O-Ge結合中にあり,この場合の酸素原子は異なる活性化エネルギーをもつとして解析を行った.その結果,混合ガラス試料の内部摩擦はSi-O-Si結合による35KのピークとSi-O-Ge結合による65Kのピークが重なったものであることが明かになった.また,pureなSiO_2ガラスに20ppm程度の酸素をドープした試料についても測定を行った.その結果,35Kのピークの温度は変化せず,高さが約5%増大することがわかった.光学測定によれば.SiO_2中の酸素はO_2分子の形で存在することがわかっており,それによる内部ひずみがSi-O-Si結合中の酸素原子による内部摩擦を増大させているものと思われる. SiO_2ガラスの徴視的な構造については,中性子散乱や光散乱の実験も盛んに行われており,中距離秩序の存在等が明かにされつつある.我々の力学測定の結果をそれらの実験結果と合わせて議論することにより,ガラス中の緩和過程が明かにされるものと思われる.現在更に,ガラス転移点における緩和過程の研究の準備を進めている.
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