本研究は、同相-液相転移の理論を確立し、それに基づいて液体表面・界面の構造と熱力学的性質の微視的様相を明らかにし、最終的な目標として、表面融解や表面固化等の表面・界面における相転移の微視的機構を解明することを目指して行われた。固相-液相転移は日常的に最も馴染みのある相転移であるが、その研究の大部分は現象的または半現象論的なものであり、第一原理に基づく微視的理論とはほど遠いものであった。近年、この問題に対して、いわゆる凝固(固化)の密度汎関数理論がひとつの有力な方法論として浮上し、いくつかの理論が提案された。しかし、これらの理論は短距離相互作用系に対してはかなりの成功を収めたが、現実的な体系(特にクーロン液体)に対しては破綻し、その原因の解明とそれを克服する理論の構築が当面の課題であった。本研究はその原因解明を出発点として始められ、まず従来の理論の解析を行いその欠陥を明らかにした。次にその欠陥を克服する新しい理論の定式化を試みた。この理論はいわゆる熱力学的摂動論の立場に立ち、それを不均一系に拡張・一般化したものである。また、その理論を一成分古典プラズマおよび逆べきポテンシャル系に応用し、このような長距離相互作用系の固化に対して有効であることを確認した。しかし、その過程で種々の理論的および計算手法上の困難に直面し、最終目標には到達できなかった。現在、上記の理論を液体表面および液相-固相界面に適用できるようにさらに拡張・一般化する研究を行っている。 また、これらの研究と併行して、電子構造に対する表面効果およびサイズ効果の基礎的な知見を得ることを目指して、微粒子に関する研究も行った。上で述べた統計力学的研究とこの電子論的研究を結び付けることによって、表面・界面現象を解明することが今後の課題である。
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