興奮性を示す反応拡散系で生じる空間パターンの動的構造を、特異摂動法に基づく解析的計算、及び計算機シミュレーションによって研究した。得られた成果は次のとおりである。 (1)興奮領域と非興奮領域が空間的に交互に配列した系での興奮領域(ドメイン)の脈動に対する非線型結合振動子方程式を導いた。その数値計算によって、すべての興奮ドメインが位相をそろえて脈動する場合と、となり合うドメインが反位相で脈動する場合とが共存し得ることを見い出した。また、この研究の発展として、興奮・非興奮ドメイン境界の運動に注目して計算機シミュレーションを行なっている。同位相や反位相の脈動のみならず、興奮ドイメン間の相互作用の時間遅れを大きくしていくと、カオス的な脈動が出現することを確かめている。 (2)興奮因子と抑制因子の拡散係数の比を変えていったとき、空間的に局在した動かない興奮ドメインが不安定化し、パルスとなって伝ぱんし始める様子を詳しく解析した。特に、拡散係数の比が中間的な値をとるところでは、n(1<n<∞)-パルス列が安定に自己生成されることを見い出した。これは従来しられていない新しい知見であり、さらに研究を進めている。
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