研究概要 |
強誘電性転移(転移点Ta)、超伝導性転移(転移点Tc)等を総合的視野でとらえると、種類の違いを越えた共通性があり、転移点の高い物質の相転移メカニズムを解明する上で意義がある。まずNMR-NQRスペクトルの理論を作り、局所構造を解析することに成功した(論文発表済)他、混晶のドメイン構造を理論的に予測し(論文発表済)、Taやグラス転移点Tgが決まる機構をしらべた。1次元系の水素結合型強誘電体を例に相転移の理論を作った(論文発表済)が、高いTaはプロトン間相関への格子のくり込まれ方や相関の異方性(低次元性)により実現される。また、物質による水素結合長R(0…0,H-H)の違いと、相転移メカニズムで決まるTaとの相関を証明し(論文発表済)、1次元→2次元→3次元、及び所謂0次元系を含めた一般式を作って高いTaと構造の相関をしらべた(論文発表済)。次に、超伝導性と誘電性との接点が見られる2つの物質の機構を解明した。1つ目は、ハロゲン架橋遷移金属錯体で、水素結合でつながれた擬1次元M-X化合物(M:遷移金属、X:ハロゲン)における電子-プロトン相関の理論である(論文発表予定)。プロトンによるCDW間の秩序化の起こる転移点Tpは、電子系の1次元性が大きく、電荷のゆらぎρや電子-プロトン結合力gが許容範囲で大きくなるとき高くなる。水素結合を有する電子系は、他の擬一次元電子系より電子相関を制御しやすく(論文投稿中)、さらに電子-プロトン強相関系では、CDWを凌駕して超伝導性の出現も可能となることを示唆した(論文発表済)。2つ目は、アルカリ金属をドープしたフラーレンの超伝導で、フォノンを媒介とする超伝導でもかなり高いTcをもつことを、構造相転移と競合する超伝導理論を作って説明した(論文投稿中)。以上の結果からTcを高くするのに必要なメカニズムが、Taを高くする必要条件と類似性をもつことがわかり、強誘電性から超伝導性に至る統一理論の素地が出来上がった。
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