研究課題/領域番号 |
04640367
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
興地 斐男 大阪大学, 工学部, 教授 (20029002)
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研究分担者 |
笠井 秀明 大阪大学, 工学部, 助教授 (00177354)
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キーワード | 断熱ポテンシャル / 活性化障壁 / 反応経路 / 解離吸差 / 分子配向効果 / 水素分子 / レインボー散乱 / 一酸化窒素分子 |
研究概要 |
本年度得られた成果を以下順に述べる。1.銅表面と水素分子からなる系での解離吸着過程、会合脱離過程に現れる断熱ポテンシャル曲面の形状効果を調べるため、先ず、2個の銅原子と水素分子からなる系の断熱ポテンシャル曲面の第一原理計算を行った。その結果、分子軸が表面垂直に配向している場合には水素分子の吸着状態は見いだせなかった。一方、分子軸が表面平行に配向している場合には、解離吸着状態を見いだすことができる。この解離吸着に対する活性化障壁の高さは約1eVであり、反応経路の曲がっている領域よりも活性化障壁は表面に近いところに位置していることがわかった。これらの結果は、定性的には密度汎関数法などによる計算結果とも一致している。2.第一原理計算の結果から断熱ポテンシャル曲面の形状が分子軸の配向に強く依存していることが見いだされたが、このような配向依存性は、解離吸着系ばかりでなく分子状吸着系においても見いだすことができる。Ag(111)表面で散乱されるNO分子の回転状態分布において観測された分子配向効果がその一例である。実験ではシュタルク効果によって多重極場の中で分子軸が揃えられたNO分子を金属表面に入射し、散乱される分子の回転状態が共鳴多光子イオン化法で測定されている。これに対応するダイナミクスの計算を行い、実験結果を再現することができた。散乱分子の回転状態分布に観測されている2つのレインボーピークの低エネルギー側のピークは主としてN原子を表面に向けて入射する分子の散乱によって、高エネルギー側のピークは主にO原子を表面に向けて入射する分子の散乱によって形成されていることがわかった。このダイナミクス計算を通じてNO/Ag(111)系の断熱ポテンシャル曲面の分子配向依存性を明らかにすることができた。
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