研究概要 |
非局所応答理論の応用により、以下の諸問題を研究した.[1]半導体超微粒子を0-3次元に配列した系の共鳴応答を調べ,各サイズ量子化準位の輻射補正のサイズ変化を明らかにした.誘起分極と内部電場の大きさと空間分布も同時に計算し,ある特定のサイズと振動数(エネルギー)に対して特定の空間分布を持つ成分がサイズ共鳴増大することを示した.これは微粒子系に限らず,一般に全てのメゾスコピック系に期待されることがわかった.更にこの計算結果を用いて微粒子系の近接電磁場の分布を計算し,それぞれの共鳴に特徴的な分極密度の空間分布を反映した近接電磁場分布を得た.これは目下注目を集めている走査型近視野顕微鏡(フォトンSTM)において理想的な超高分解能チップがみる電磁場分布に対応しており,今後の理論的検討の基礎になるデータである.[2]メスバウアー共鳴回折の理論を定式化し,原子核の共鳴エネルギーにたいする輻射補正(シフトおよび幅)を導く方程式を求めた.有限の放射寿命幅を与える結晶試料のモデルとして,2次元結晶面をN枚積み重ねたものを考え,Nおよび幾何学的配置を変えたときの放射寿命幅の変化を数値的に計算している.[3]半導体・絶縁体の界面電子状態による共鳴SHG(2次高調波発生)の理論を定式化した.従来の方法と違って,界面部分の電磁場に対する境界条件は要らない形に定式化されている点がこの非局所的な方法の利点である.面内の並進対称性と長波長近似を用いることにより,問題を3元連立2次方程式を解くことに帰着させることが出来た.界面バンドの分散や遷移行列要素の波数依存性はすべて係数の中に含まれる.現在適当なバンドモデルを用いて,SHG強度の入射光エネルギー依存性を数値計算している.[4]CuClの薄膜に対する3次非線形応答(ポンプ光存在下でのプローブ光応答の変化)の計算を従来より厚い膜厚まで実行できるようになった.これは共鳴条件の詳しい検討により不要な非線形項をより分けて無視することが可能になったため,数値計算が大幅に簡略化されたためである.この結果応答スペクトルの形は,以前代表者が使った理論の結果と非常によく似たものとなり,理論を第1原理的に改良しても厚い膜にたいする実験と理論の不一致は改良されないことがわかった.不一致の原因は理論側よりむしろ実験側にある(例えば,薄膜が一様でなく面欠陥を含んでいるなど)可能性が高いと考えられる。
|