研究概要 |
非局所応答理論を用いて以下の問題を研究した. [1]半導体薄膜のポンプ・プローブ分光(光学的シュタルク効果)の計算を行い,膜厚dの増大にともなって電子遷移における波数選択則が次第に明瞭になる様子,非線形電子遷移の中間状態で共鳴か非共鳴かに依存したスペクトルのシフトおよび幅の増大が起こること,さらに非線形スペクトルに単純な2光子吸収スペクトルも重なって現れること,シュタルクシフトの向きは励起子ポラリトン分散曲線の非線形変調の形から簡単に指定されることなどを明らかにした.また,以前代表者が用いた誘電関数の非線形変化のモデルと本理論の比較を行い,解析的によく対応がつくことを示した. [2]これまで調べてきた半導体微粒子系の光学応答の計算を拡張して,フォトンSTMのモデル計算を始めた.サンプルとプローブ端を半導体微粒子の集合としてモデル化し,その近接電磁場の強度分布と,「プローブ端に誘起される分極が遠くにつくる電磁場」で定義される信号強度とを計算した.分解能を上げることと信号強度をなるべく落とさないことを目的として共鳴条件下での測定に注目している.これまでにわかったことの主なことは,(ア)試料球とプローブ球の共鳴エネルギーが近いと,プローブ端の位置とともに全系の共鳴エネルギーが大きく変化するため一定エネルギーで走査したときの試料の像が著しく先鋭になるというconfigurational resonanceの効果があることと(イ)反射モードで測定する場合,電気双極子遷移と高次多重極遷移とが同定度の強度で観測されるという,従来の光学遷移の常識を破ることが可能になることを示した.
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