研究概要 |
2次元電子系のde Haas van Alphen振動に対する電子間相互作用の効果について議論した。電子相関が強いときには2次元のランダウ準位の状態密度の特異性に起因して振動の波形を変える新しいタイプの効果があることを指摘した。 超伝導状態において観測されるde Haas van Alphen振動に関して理論的に検討した。その結果、超伝導状態で振動が観測されるためには従来型のs波ペアではなく,ギャップがフェルミ面上の線または点でゼロになっっているd波などの異方的ペアである必要があることを指摘した。また逆に他の実験から異方的ペアが実現していることが判っている重い電子系やその可能性が強く示唆されているC15やA15などの化合物において、de Haas van Alphen振動の磁場方向依存性を観測することによってペアの異方性を決定する可能性について論じた。 銅酸化物高温著超伝導体では、クーパーペアのサイズが極端に短くて波数空間のペアと実空間のペアとのクロスオーバーの領域に位置するものと考えられ、超伝導の基礎理論の観点からも検討を要する。その手始めとして、2次元超伝導のクロスオーバーに関するNorieres & Schmitt-Rinkの理論を批判的に検討しその枠組の問題点を明確に指摘した。 マルチチャネル近藤効果では通常とは異なり非フェルミ液体的な固定点が基底状態で実現することが従来の様々な研究から明らかにされてきたが,伝導電子が不純物の位置にきたとき電子間に働く斥力がその固定点の安定性にどのような影響を与えるか検討した。その結果、伝導電子間斥力はフェルミ液体的固定点を回復するような効果をもつことが明らかになった。従って,ウランを含む重い電子系で観測されたと主張されている非フェルミ液体的振舞いの起源はマルチチャネル近藤効果とは別のものに求めるべきであろう。
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