当該年度に於いては前年に引き続き主として二つの課題について研究を進めた。 第一は有機導体(TMTSF)_2Xの磁場誘起スピン密度波状態の研究を更に発展させた。 第二は重い電子系UPt_3の超伝導の対関数の同定の研究を行った。 第一の課題については標準モデルに基づいてスピン密度波状態の最も安定な解を探し磁場下では多数の秩序変数の同時的存在で特徴づけられる秩序状態が安定化することを先に示した。本年は更にこの状態を用いて量子ホール係数の計算を実行し、磁場の下でのホール係数が量子化される原因と符号が磁場の関数として変化しうることを明らかにした。 第二の課題については対関数として一次元表現に属する奇パリティーを持つ状態がUPt_3の超伝導として最も可能性が高いことを示し、それに基づいてさまざまな物理量を計算した。低温での比熱のこの状態に特有の振舞いの予言は今後実験的にチェックされることが期待される。磁場と温度平面での相図も渦糸構造を決定する中で求めることができた。
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