研究概要 |
電気流体力学的不安定性におけるトポロジカルな乱流は二種類あり、最近、発見・研究されるようになった。一つは欠陥乱流で、対流発生分岐点近傍で観測される弱い乱流である。これは、周期構造中に欠陥が発生し、対生成消滅を不規則にくり返す現象である。この場は周期位相場内に発生した欠陥場として考えられるが、欠陥場のみを取り出すことによった逓減法では、記述が不可能であることが分かった。その理由は電気対流系では位相場と欠陥場が結合しており、切り離せないためである。 この結果、実験的に観測される1/fスペクトル→ホワイトスペクトルへの遷移のメカニズムや、アスペクト比依存性は、まだ十分理解されていない。また、欠陥乱流発生に関して、ジグザグ不安定性が重要であり、一方、スキュードバリコースとジグザグ不安定性が同時に生じると、一般に周期構造を経づに欠陥乱流に転移すること、スキュードバリコースがジグザグ不安定性よりも先に不安定となる場合には新しい秩序構造、欠陥格子が発生することなどが観測された。現在これらの再検討を行なっている。 一方、もう一つのトポロジカル乱流は十分に発達した乱流に生じる乱流-乱流転移に伴って発生する。これは、ディスクリネーション乱流と呼ばれ、液晶の配向特異線が流体場と結合することによって生じる特殊な乱流である。この乱流では次のような性質が実験的に観測されている。(1)ディスクリネーションの密度が新しい乱流の秩序度である。(2)ポテンシャル的な運動をする。(3)分岐現象が不完全型として分類される。(4)発達途中で双安定状態を示し、最終的に単安定へ収束する,いわゆる過渡双安定性を示す。(5)この双安定性は分岐点近傍のみで観測される。(6)液体超流動ヘリウムに見られる量子渦乱流の乱流-乱流転移とよい類似性を示す。以上のような事実が得られているが、その解明は今後の問題として残された。
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