1)これまでに良く調べられてきたガウシアンランダム行列アンサンブルにおいては、行列要素がすべて独立に分布しており、その直接的な帰結として準位密度が半円形になり現実の量子系の性質を再現できない。準位分布の局所ゆらぎを使ったまま準位密度を変化させるためには、行列要素間の相関を取り入れる必要があると考えられる。そのような要請を満たすモデルとして、Balianのアンサンブルを取り上げた。このモデルにおいては、与えられた準位密度の下で情報量が最小化されており、準位間の相関は対応する直交多項式を用いて表現される。古典直交多項式に対応するアンサンブルを解析し、とりわけ指数型の分布関数をもつ実対称および自己双対四元数行列のアンサンブルについて、準位分布の局所ゆらぎの普遍性を証明した。 2)強結合電子系の変分波動関数として用いられるJastrow型波動関数に対して、離散格子上での任意次数の相関関数を一般的に評価した。 3)ランダム行列と強い関連をもつ準位統計のモデルである一次元離散型シュレディンガー方程式を考えた。このモデルは三重対角行列として表され、そのエネルギー準位は対応する直交多項式の零点になる。準位分布の局所的な特性の評価を行ない、古典直交多項式に関連する場合については局所的ゆらぎが生じないことを証明した。 4)1/r^2で相互作用する多粒子系はCalogero系またはCalogero-Moser系とよばれる。Lax演算子を用いることにより保存量の新しい構成方法を与え、この系の可積分性を示した。また、拡張されたLax方程式を用いることにより、代数的構造を明らかにした。さらに、Calogero系にスピン自由度を持たせた量子スピン系を新たに考え、その基底状態、可積分性、および代数的構造を示した。
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