研究概要 |
本研究は,量子電磁力学的には予想されているが未だ実験に成功していない,真空の微弱な磁気光学異方性の検出を目標に,その予備研究として,稀薄残留気体による非共鳴フォークト(Voigt)効果の影響を評価することを目的とするものである.平成4年度は,装置の検出感度に関して,下記の基本的問題点を検討した. (1)検出方式の検討,実験装置の設計および試作 光源は,出力の安定な半導体レーザー(波長782nm)を用いた.電磁石の磁場変調により,信号対雑音比の改善を図った.磁束密度は0.78T,磁場中の光路長は50mmとした.方解石を用いた偏光解析装置,および光電子増倍管を用いた光子計数装置により,偏光の微小変化を検出した.ターボ分子ポンプを用いて,清浄な高真空の実現を図った. (2)半導体レーザーの光出力安定化と光子統計雑音限界の達成 半導体レーザーの駆動電流を変動率で10^<-5>程度まで安定化し,温度を0.2℃以内に安定化したとき,レーザー光出力の変動率は3×10^<-4>(光出力4mW,10秒間)で,信号検出器において光子統計雑音限界に到達し得た. (3)偏光解析装置の試作と性能評価 偏光解析装置の消光比は,2×10^<-8>に達し得ることが実験的に確認された.ただし,この値は光学系素子による光散乱の影響を受けやすい.特に真空セルの窓材の光学的品質によって,消光比は大きく影響されることが判明したので,この問題が次年度の課題となると予想される. 以上の予備実験結果から,本研究の実験装置は楕円率として5×10^<-8>程度の微小光学異方性を検出可能な性能を有すると考えられる.平成5年度に目標としている,残留気体の磁気光学的影響の評価に関しては,少なくとも酸素分子など光学異方性係数の比較的大きい気体に関しては,所期の成果が得られる見通しが得られ,他の気体についても検討する.
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