研究概要 |
真空の磁気光学効果を検出するための,高感度測定を研究することを最終目標とし,そのための基礎研究として,予想される妨害雑音源,特に残留稀薄気体による非共鳴磁気複屈折性(Voigt効果)の影響を評価するための装置を完成させ、評価実験を行った. (1)実験装置の完成 真空セル,真空排気系,ガス導入系,光学系,および励磁電気系の設計・製作・調整を行った.真空セルは非磁性金属(Al)製で,両端には,窓の代わりに偏光子および検光子を直接装置できるようにした.また,窓を装着せずに解放端とし,気体を流す方式についても検討した.実験装置の製作に必要な光学材料および部品,ならびに回路部品は購入し,電磁石の励磁用電源は,電気・電子部品を購入し自作した.(磁束密度は最高約0.8T.) (2)磁場変調による信号対雑音比の改善 磁場発生装置として電磁石を用い,磁場を変調することにより,信号対雑音比の改善を図った.磁場変調周期は14秒とした.コンピュータ制御により磁場のオン・オフを行い,これと同期して光子計数およびデータ処理を行う方式を採用し,雑音を低下させた. (3)各種気体の非共鳴磁気複屈折効果の測定 気体の非共鳴フォークト効果を測定し,稀薄残留気体の非共鳴磁気複屈折性が,真空の磁気光学効果に及ぼす影響を評価した.半導体レーザーの発振波長780nmにおける酸素の磁気光学定数は,C=-(5.4±0.5)×10^<-16>[G^<-2>cm^<-1>](大気圧,16℃)で,N_2,Arの値はそれ以下であった.真空度10^<-10>[Torr]における残留気体の磁気複屈折性は,真空の磁気複屈折性に対して無視し得ない影響を生じる可能性がある.ただし磁場により誘起される複屈折性は,Δn=CλB^2で,λは光の波長である。
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