研究概要 |
真空の磁気光学効果を検出するための,高感度測定法を研究することを最終目標とし,そのための基礎研究として,予想される妨害雑音源,特に残留稀薄気体による非共鳴磁気複屈折法(Voigt効果)の影響を評価する装置を完成させ,評価実験を行った. (1)方式検討,装置設計,およびレーザーの光出力安定性と光子統計雑音限界の確認 半導体レーザーの駆動電流を変動率で10^<-5>程度まで安定化し,温度変動0.2℃以内のときの光出力変動率は2×10^<-4>(光出力3mW,16分間)であり,磁気光学信号検出器に発生する背景雑音に関しては,光子統計雑音限界に達し得ることを確認した. (2)偏光解析装置の試作と性能評価 偏光解析装置の消光比は,2×10^<-8>(窓なしのとき)に達し得ることを実験的に確認した. (3)実験装置 真空セルは非磁性金属(Al)製で,窓の代わりに偏光子および検光子を直接装着でき,また,窓なしの解放端で,気体を流す方式も可能である.磁束密度は最高約0.8Tである. (4)磁場変調による信号対雑音比の改善 磁場を変調することにより,信号対雑音比の改善を図った(磁場変調周期は14秒).コンピュータ制御により,磁場変調と同期して光子計数とデータ処理を行う方式を採用した. (5)各種気体の非共鳴磁気複屈折効果の測定 気体(O_2など)による非共鳴フォークト効果を測定し,稀薄残留気体の非共鳴磁気屈折性が真空の磁気光学効果に及ぼす影響を評価した.半導体レーザーの発振波長780nmにおける酸素の磁気光学定数は,C=-(5.4±0.5)×10^<-16>[G^<-2>cm^<-1>](大気圧,16℃)で,N_2,Arの値はそれ以下であった.真空度10^<-10>[Torr]における希薄残留気体の磁気複屈折性は,真空の磁気複屈折性に対して無視し得ない影響を生じる可能性がある.ただし磁場誘起複屈折性は,Δn=CλB^2で与えられ,λは光の波長である.
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