本研究の目的はK_<2´>Rb_<2´>Cs_2分子の多光子電離の結果生成されるイオンの生成数、及びこの電離に関与する光子数を示す非線形度の波長依存性を求め、得られた結果の考察から電離の機構や分子構造に関する知見を得ようとするものであった。K_2分子は波長域600-670nmのレーザー光を照射した際、K^+、K_2^+イオンを生成する。2あるいは3光子が関与した結果であることはポテンシャル・エネルギー図と非線形度の波長依存性を見れば明らかである。しかし、非線形度の波長依存性は2あるいは3という整数値を示さず1と2の或は2と3の間の値を示した。これは、分子が初めに、オーブンの温度で決まるボルツマン分布でもって、基底状態のより高い振動準位にも分布している事に起因している。このことを考慮して、生成イオン数の波長依性を定性的に説明することができた。Rb_2分子に於ても、上記波長域では、ポテンシャル・エネルギー図から明らかなように、Rb^+、Rb_2^+イオンは各々3光子、2光子と3光子が関与した過程により生成されるはずである。Rb_2分子の場合に特に特徴的な事は、第一に、観測されたRb^+、Rb_2^+イオンの生成数の波長依存性から、2光子と3光子過程、さらに、3光子でもRb^+とRb_2^+イオンの生成過程関が競合的であり、我々はこの比の値を実験的に求めたこと。第二に、予測されたように、ビーム中のRb_2分子は最初、基底状態のより高い振動準位にもすでに分布しており、生成イオン数の波長依存性は、この基底状態から1光子で移る事ができる中間状態へのフランク・コンドン係数によって規定される事を計算との対応で明らかにしたことである。Cs_2分子の特徴は620-670nm域では、Cs_2^+イオンのみが生成され、Cs^+とCs_2^+イオンの間に競合関係がないことである。Rb_2分子のと同様な結論が計算との対応で明らかになった。
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