研究概要 |
コヒーレンストランスファーの過程の特質を明らかにする目的で、次の1-5の過程についての研究を行った。これらに関する研究成果は次の通りである。 1)実験装置の製作:Cs原子およびRb原子のD1線、D2線にそれぞれ共鳴する半導体レーザー光源装置4台の製作を完了し、実験装置を完成させた。この光源装置では,電流及び温度安定化により発振波長(振動数)を1MHz程度に安定化させることが出来た。 2)自然放出による過程:Cs試料について、自然放出過程により他準位へ移行した副準位間コヒーレンスを、自己誘導減衰およびコヒーレンストランスファーエコーの方法で観測することに成功し、実験結果を理論計算によって解析した。自然放出過程によるコヒーレンストランスファーエコーの観測はこれまでに報告されていない全く新しい現象である。 3)光吸収による過程:Cs試料について、直線偏光励起によるコヒーレンストランスファー過程を調べる実験を行い、新しい形のコヒーレンストランスファーエコーの現象を見いだした。将来,より詳細な実験を行い結果を公表する予定である。 4)ライトシフト効果による過程:予備実験を完了したが,実験的検証は現時点では困難であることが分かったので,将来の誹題として残すこととした。 5)原子衝突効果による過程:装置の関係で緩衝気体圧力の連続変化を行う実験は出来なかったが、異なる圧力のセルを用いた予備実験には成功し,原子衝突過程によるコヒーーレンストランスファーの効果を検出するとともにその特性を定性的に理解した。
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