星の進化の最終段階である超新星爆発は、天文学の対象であるだけでなく、極限状態の物理学として宇宙物理学の中で最も興味深い研究対象の一つである。しかし、超新星爆発の理論は、SN1987Aで観測されたニュートリノの放出を正しく予言することができたにもかかわらず、その爆発機構を明らかにできずにいる。本研究の目的は、最近発展のめざましい高密度物質の状態方程式の研究成果をもとに、この混迷した理論の現状を打開し、爆発機構を明らかにすることにある。そのために、超新星物質の状態方程式、電子捕獲反応率を計算し、超新星爆発のシミュレーションの準備をすること、更に、爆発に重要となる回転の効果について考察することが、今年度の課題であった。これらの課題について、以下の結果が得られた。 (1)爆発に有効であると考えられる柔らかい一次相転移を含む状態方程式を計算し、その性質を調べた。また簡単なシミュレーションにより、状態方程式の爆発に与える影響を調べた。その結果、相転移後コアが非常に高温になることがわかった。 (2)sd殻核の原子核について、電子捕獲反応率、電子捕獲反応で発生するガンマ線による加熱率と、ニュートリノによる冷却率を計算した。これらは、現在最も信頼できる計算値である。 (3)2次元の流体力学の方程式を解くプログラムを開発し、回転星の中心で発生した衝撃波がどの様に伝搬していくかを調べた。特に衝撃波の伝搬の非球対称性を調べ、SN1987Aの観測と比較した。
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