研究概要 |
1.応力記憶の性質に関する実験 a.DRAによる結果が水圧破砕法によって得られる結果と異なる場合があることを前年度に指摘した。本年度も引き続きDRAによる測定を行い,この食い違を確認した。すなわち,水圧破砕法で見いだされた応力値の深さによる大きな不均一をDRAでは見いだすことが出来なかった。しかし,この理由を明らかにすることはできなかった。 b.地震の発生活動が比較的低い北上山地地域の釜石の応力を推定した。この結果とすでに推定されている同地域西部の江刺での応力は,北上地域の剪断応力が内陸で発生した地震の余震域で推定されたものに比べて,断層の極近傍での値を除けば,決して小さくはないことを示している。一例ではあるが,内陸地震断層の近傍には顕著な応力の不均一があることが見いだされているので,上記の結果は不均一な応力場の存在が地震発生の条件である可能性,すなわち,地殻中において応力場の均一化が大規模に行われている可能性を示唆するように思われる。 2.岩石内応力場の均一化過程に関する研究 a.地殻応力に等しい応力を印加すると,応力場が最も均一になるような岩石を想定し,圧縮試験したときのその岩石の変形を定式化した。この定式化により,変形率変化(DRA)が,地殻応力を推定する方法として最も合理的な方法であることが示された。また,三軸圧縮試験下の岩石にDRAを適用することによっても地殻応力の推定ができること,静水圧下の試験では地殻応力の各成分を求めることができないことも有り得ることなども明らかになった。 b.前年度に得られたコンプライアンスの変化や(2-a)に示された理論的な結果は転位の運動や化学反応による岩石構成物質の形状変化が岩石内の応力場の均一化をもたらすことを示唆している。
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