研究概要 |
1992年7月18日17時36分、岩手県沖でマグニチュード6.9の地震が発生した.この時の江刺の伸縮計記録を、ベイズ方による潮汐解析プログラムBAYTAP-G(e.g.,Ishiguro and Tamura,1985)にかけ、地球潮汐と大気圧の影響を効果的に取り除くと、地震直後から、振幅約4x10^<**>(-8)、時定数約1日の準静的歪ステップが明瞭に見られた.宮古(東北大学)の伸縮計記録も、振幅は約1.5x10^<**>(-7)で江刺より約4倍大きいが、江刺とそっくりの歪波形をしている.この事実から、歪の準静的ステップが震源そのものにおける現象であり、岩手県沖地震の正体が超スロー・アースクエイクであることが明らかになった. 「準静的歪ステップの震源域は、18日の地震の余震域かそれに隣接するプレート境界面上のスベリである」と「点震源」の2つの仮定のもと、江刺と宮古の歪ステップにMatsu'ura and Hasegawa(1987)のインバージョン法を適用すると、予備的な結果であるが、メカニズムは地震とほぼ同じ低角逆断層で、解放されたモーメントは4x10^<**>20 Nm(M7.7)の地震に対応)と見積られた.暫定的な解は、北緯39.5度、東経144.0度、深さ10km、走向N195度E、傾き2度、ズレの角度83度である.この超スロー・アースクエイクも含めて、三陸沖のプレート間カップリングは津波地震も含めて3割くらいになることが分かった. この超スロー・アースクエイクが、何故、明治三陸津波地震の様に巨大な津波地震に拡大しなかったかは不明だが、日本海溝における津波地震の長期確率予測にとって重要な結果である.
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