研究課題/領域番号 |
04640406
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河村 俊行 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (50091434)
|
研究分担者 |
榎本 浩之 北見工業大学, 工学部, 助教授 (00213562)
大島 慶一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (30185251)
若土 正暁 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60002101)
|
キーワード | 極地海洋 / 大気-海洋相互作用 / 海洋構造 / 海洋熱流量 / 海氷 / 上積氷 |
研究概要 |
第31および32次日本南極地域観測隊によって得られた観測結果の解析から以下のことが明らかになった。 リュツォ・ホルム湾内の係留による長期測流観測によると、湾中央を走る氷河トラフの斜面では通年南流が卓越し、湾東端のオングル海峡では5月まで南流、6月以降は北流が卓越していた。2点とも、風との相関が高く、特にトラフ斜面は、西向きの風に対し約6日遅れで南流が強まるという応答をしている。湾内および周辺の地形をモデル化した数値モデルにより、風に対する湾周辺の海洋の応答を調べた。その結果、定着氷縁がシェルフブレイクまで張り出している場合(6月以降)、卓越風(西向きの風)に対し、陸棚波の第2モードが卓越し、陸棚斜面では西・南流が誘起され、ごく岸近くでは東・北流が誘起される。一方、定着氷縁が大陸沿岸近くまで後退している場合(5月以前)、陸棚波の第1モードが卓越し、陸棚上ではすべて西・南流が誘起される。これらの結果は、観測結果と非常によく対応している。また、陸棚波に伴う流れによって外洋水が湾内に流れ込むことになり、湾内の海洋構造は外洋のそれを反映したものになることが予想される。さらにこの流入に伴って、中・下層からは高温・高塩の南極周極深層水が湾内に運ばれ、これが定着氷下に多量の熱を輸送することになる。 リュツォ・ホルム湾内の積雪深・氷厚およびその季節変動には地域特性が認められた。積雪深の増大に対応して、氷厚も大陸から離れるに従って増大していた。積雪の少ない観測点の氷厚は、冬の間に増大し、春から夏に前年の氷厚まで減少し、それを繰り返しているようである。一方、積雪の多い地域では、厚い積雪と海氷のため、冬の間でも殆ど成長していない。しかし、夏の時期に極めて大きな氷厚の増大が認められた。これは、この期間に積雪が融け、その融解水の再凍結(上積氷の形成)で成長したことを示唆している。
|