研究概要 |
積雪内の融雪水の流下の非一様性を調べるため,内部が100個の枡で形成されているMCLを製作した。このライシメータを北海道幌加内町母子里の観測露場の積雪下面に設置し,1992年4月12月から17日の6日間観測を行った。観測から次のようなことがわかった。 (1)6日間にわたって積雪下面における流出の分布を調べたところ,顕著な流出はほぼ同じ位置の枡で起こった。また,その面積は22から27%だった。この間,積雪は全層ザラメ化していたが,粒度・密度の鉛直分布から成層構造が認められた。また水路の存在を示すような窪みが融雪期の末期に見られた。 (2)4月12日について各枡の流出を調べたところ,14個の枡でMCL全体の98.5%の水が流出した。特に,最も流出量の多い枡は全体の量の35%を占めた。融雪量から考えると,この枡は枡の面積の約54倍の面積で発生した融雪水を集めたと考えられる。さらに流出の遅れを流出開始時刻の遅れと重心の遅れで調べたところ,流出開始時刻は流出量が少なければ遅れるという傾向が見い出されたが,重心については流出量の多寡とは無関係だった。特に,最も流出高の大きかった枡は,MCL全体での遅れ時間より大きい遅れ時間であった。このことは,集水面積が大きいことによる水平方向の水の移動時間が大きいためと推測される。 平成4年11月には,斜面用のMCLを製作し,実験流域の一斜面に設置した。平成5年4月に各セルからの流出量を観測する予定である。 融雪水の積雪下面での流出をあらわすモデルを作った。これはガウス分布の入力に対して遅れを指数関数的に増加させて分布を変形させ,出力に近似させるもので,従来困難であった流出の立ち上がり部分がうまく表現できた。
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