本研究では、AVHRR/NOAA衛星から得られる海面水温とTOPEX海面高度計から得られる海面高度情報を用いて、東北海区における海洋変動現象を研究した。研究に先立って、AVHRR海面水温とTOPEX海面高度の推定手法の確立のための研究を進め、ほぼ満足できる処理システムを構築した。 海面水温情報を用いて、東北海区における台風通過時の海面水温急降下現象を解析した。これは、広域の海面温度分布を短時間でとらえうる衛星観測の利点を最大限に生かして実現したものである。1989年8月の東北海区において、2つの台風通過前後のAVHRR海面水温を比較したところ、親潮の海域で5〜10Cの海面水温降下が起こっていることが見つかった。この現象について、船舶データとの比較、海面フラックスの推定などを行って原因の究明を行ったところ、親潮域の表面近くの夏季温度躍層が台風によるかき混ぜで破壊されて起こったことを突き止めた。さらに、数値モデルによる同現象のシュミレーションを行って、その推測が正しいことを確認している(J.Geophys.Res投稿中)。 TOPEXの海面高度計のデータを用いて得られる海面高度情報を、東北海区で得られた船舶観測のデータを元に検証し、精度検証を行うとともに、今後の利用のための考察を行った。精度が不十分な海洋のジオイドの情報を補うために、気候学的な海面高度分布を利用する方針を立て、実際の観測データとの比較において調べたところ、TOPEX海面高度は約13cmの精度を持つことが確かめられた。また、熱赤外画像との比較においても、海洋構造の表現において、十分優れていることが確かめられた(J.Geophys.Res投稿中)。
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