平均的な下降流のもとで、海洋上の大気混合層が、外部条件によってどのように変化するかを、混合層中のおもな熱・水蒸気輸送を担う大きな対流を直接表わせる細かなグリッドを用いた数値モデルによって調べることが本研究の目的である。これまでの2次元のモデルを3次元に拡張し、また、渦粘性・拡散係数を成層安定度やシアーから診断的に決まるものから、予報変数とするものへ改良した。外部条件としては、これまでと同じ、「海面水温、海面気圧、高さによらず一定の平均水平発散、上部境界から下降してくる空気の温位および相対湿度、高さに比例した放射冷却率」を考え、海面からのフラックスと鉛直下降流による加熱が放射冷却とバランスする状態での混合層の鉛直構造が外部条件にどのように依存しているかを調べた。今年度は3次元化などを行なったため、放射過程を雲水量などによって表わす方法の導入は行なえなかった。基本的な結果は、前のモデルと変わらず、1.上部境界で与える相対湿度が小さい方が、低い温度・湿度でバランスする、このとき、相対湿度が低い時ほど、逆転層上下の相当温位の差でみた対流不安定度が大きく不安定となり、雲量は小さくなる、2.全体の温度が高くなると、不安定度が増し、雲量は減り、積雲的になる傾向がある、3.放射冷却と鉛直下降流を大きくすると、混合層の高さが低く押さえられる一方、対流が活発になり、雲量は減って積雲的になる、という結果であった。雲量が大きな場合は、雲頂エントレインメント不安定の条件を満たす場合はなく、ランドールらの雲頂エントレインメント不安定の仮説は実験結果とよい一致を示した。なお、渦拡散係数の与え方が混合層上部での逆転層付近の水蒸気混合比の鉛直プロファイルに影響を与え、その結果が雲頂エントレインメント不安定に関係するので、拡散係数の与え方が重要であることがわかった。
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