本年度は、雪片融解装置、融解水滴撮影装置、ビデオ画像収録及び画像解析装置とその解析プログラムを作成した。雪片融解装置は、アクリル板で作成した容器内に軽油を満たし、その温度を0〜+5℃に保ちながら、大気中を落下してくる雪片を軽油中で融解させるものである。融解水滴撮影装置は、雪片が融解する際にできる数多くの粒径の異なった微小水滴を撮影するものである。これらの微小水滴を数10ミクロンの分解能で撮影するため、高性能のビデオカメラを用い、かつ焦点から外れないように、ポンプを用いて水滴をロートの中に集めて落下させる方法を採用した。ビデオ画像はひとこまずつ解析装置に送って、微小水滴の大きさと数を計測した。融解前の雪片の重量は、これらの微小水滴の重さの和として求めた。 完成した装置は、金沢大学工学部の屋上に初め設置し、その後は北海道大学低温科学研究所の屋上に設置して測定を行った。雪片は予想通り数多くの微小水滴に分裂し、一方あられのように密度の高い雪粒子はほとんど分裂せずにひとつの水滴に変化した。これらの融解過程は、高精度のビデオカメラによって鮮明にとらえられた。本研究は数多くのデータを取得するほど融解によって生ずる水滴の確率分布関数が正確に得られる。それには今年度のみの観測例数では不足である。そのため、来年度は12月初めから北海道で観測を開始し、大量のデータを取得する予定である。また、今の装置で短時間に複数の雪片が連続して融解したときには、互いの水滴を分離することができない。現在は、プログラム上でこれらを分離する方法と、雪片をひとつひとつ分離して融解させる装置作りの両方で、この装置の欠点を修正しているところである。
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