1.インドネシア多島海を含む広い実験海域(100・E-160・E、15・N-20・S:格子間隔5Km)で順圧潮汐(M2)のシミュレーションを行った結果、多島海奥部を除いては観測値と比較的良い一致を示す結果を得た。しかしながら、得られた海峡部での潮流速は観測値の6割強であり、多島海奥部での潮汐場の再現に関する問題点も含め、粘性係数や格子間隔に対する依存性について詳細な検討を現在行っている。 2.以上の潮流の計算結果を用いて、順圧潮流によるインドネシア多島海とインド洋との海水交換をオイラーラグランジュ法によって求めたところ、約5Sv(1Sv=10^6m^3/s)という結果を得た。潮流場の再現性に問題が残されてはいるが、インドネシア多島海を通しての西部太平洋水とインド洋水との交換に潮流が有意な役割を果していることが分かった。 3.現地地形を簡単化した地形モデルでの潮流と陸岸・海底地形との相互作用に関する数値実験を行い、その力学バランスを解析することによって、シルの背後にできる鉛直循環流の発生機構を解明した。更に粒子追跡解析を行った結果、この鉛直循環が海水の鉛直混合に重要な役割を果たすことが分かった。成層が強くなると弱まるがシルを通しての海水交換はそれほど小さくならないという興味ある結果を得た。次年度には現地地形の特徴をより再現したモデルを用いて解析を行う。
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