研究概要 |
最終年度にあたる本年度は,前年度の研究成果と新たに明らかとなった問題点を踏まえて,インドネシア多島海を通しての西太平洋の暖水とインド洋水との交換・混合過程を出来るだけ総合的にとらえるために,潮流場だけでなく,流れや混合に重要な役割を果たす風の効果も一部取入れて研究を行った。得られた結果は以下の通りである。 (1)バンダ海を想定した単純模型海での潮汐波は,メラーとヤマダの乱流モデルを取り入れた結果,内部潮汐波による熱塩の鉛直輸送量の評価が改善され,シル周辺海域での海水混合が強まる。同時に,シル背後の鉛直セルの恒常的励起が強まり,シル周辺海域の躍層は破壊されるようになる(マクロな鉛直拡散係数に換算すると100cm^2/s強)。これらの鉛直混合過程と潮流とのカップリング効果によってシル周辺海域の海水は水平・鉛直方向に一様性を帯びるようになる。 (2)バンダ海内部の深海域では,潮流が弱いために以上のプロセスによる有効な混合を起こらず,主たる鉛直混合は風(アジアモンスーン)による湧昇によって引き起こされる。湧昇が強まる秋から冬にかけては,赤道域に位置しているにもかかわらず上層への塩分補給によって躍層の成層度が弱まり,結果として熱の下向き輸送が促進される。 (3)上記のスキームを用いてインドネシア多島海全域モデルを駆動すると,得られた潮汐場の水平位相分布(海域間の位相差)の再現性は必ずしも良くない。結局,位相差の再現性に関してはSchwiderskiの不均一な水平粘性係数パラメタリゼーションの使用がベターであり,その理由は今後の問題である。 (4)K1潮を加味した結果,アラフラ海等の潮流場の再現性が改善された。以上の結果の一部は既に外国雑誌に投稿した(残りは投稿準備中)。
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