インドネシア多島海における潮汐・潮流場の特性を明らかにするために、卓越潮であるM2成分とK1成分に焦点を当て数値実験を行った。計算によって求めた調和定数とその分布は潮位計による結果と非常に高い対応があり、海域全体の平均自乗誤差はM2潮は11.2cm、K2潮は8.65cmであった。1ノットを越える強い潮流はジャワ海やマニパ海峡及びロンボク海峡などの狭い海峡部周辺で発生する。このような潮流がインドネシア多島海における輸送・混合過程に果たす役割を解明するために、計算された流速場に多数の標識粒子を放ち、そのラグランジュ運動を調べた。その結果、バンダ海を経由する東方ルートでは、海底地形の変化と潮流との非線形相互作用によって長周期成分の流れが発生し、それによってセラム海からバンダ海へ3.8Svの海水輸送の生じることが明らかとなった。また、狭い海峡部周辺では潮流と水平地形との相互作用によって発生する水平渦流によって顕著な混合が発生し、このことがバンダ海などでの海水混合に効果的な役割を果たしうることがわかった。
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