本研究は屋久島南西海域において黒潮フロント付近の表層の流れの平面不布の変動をHFレーダで3ケ月に渡って観測するとともに、HFレーダ観測海域で観測期間中に行うCTD・標流ブイ追跡・船舶搭載式超音波ドップラー流速計(ADCP)観測およびトカラ海峡での気象庁海洋観測によって得られる海洋表層下の資料と鹿児島県水産試験場が実施している鹿児島・名瀬間を航行するフェリーと人工衛星による海面水温資料を用いて、黒潮フロント付近の流速、水温、塩分の立体分布とその変動の実態を捉え、黒潮フロントの維持機構を解明することを目的として、2年計画で行われている。第1年度である本年度に実施した研究内容の概要は次の通りである。 1)8月に屋久島を訪れ、HFレーダを設置する場所を選定した。適切な設置場所の選定には多くの困難を伴ったが、屋久町役場および設置場所の地権者の協力を得て、HFレーダ設置の準備を整えた。 2)10月7日から同年12月8日までHFレーダ2台を屋久町平内と栗生に設置し、屋久島南西方黒潮フロント域における海面流速の連続測定を実施した。この間に数回現地を訪れ、HFレーダの稼動状況を監視した。2台のうちの1台の作動が不良のため、流速ベクトルの大きさと向きの水平分布は11月14日から23日までの10日間他、断続的に合計20日間のみしか測定できなかった。ただし、1台は完全に稼動し、流速ベクトルの視線方向の大きさの2カ月間の変動を測定した。現在、資料の解析を進めている。黒潮流軸の南北移動に伴う渦流をとらえたことを確認している。 3)10月17〜18日および22日に鹿児島大学水産学部練習船「敬天丸」に便乗して、HFレーダ観測海域においてXBTとADCP観測を実施した。標流ブイの追跡観測は船の日程の都合から、実施できなかった。
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