本研究は屋久島南西海域における黒潮フロント付近の表層の流れの平面分布とその変動のHFレーダによる3ケ月間の連続観測と、鹿児島県水産試験場が実施している鹿児島・名瀬間を航行するフエ リーによる海面水温観測資料および人工衛星による海面熱赤外画像の解析とによって、黒潮フロント付近の流速と水温の分布とその変動の実態を捉え、黒潮フロントの維持機構を解明することを目的として、2ケ年計画で行われた。第2年度である本年度は、HFレーダ観測海域の黒潮上流域である東シナ海中央部における黒潮横断気象庁海洋定線観測資料および昨年度10月〜12月に実施したHFレーダ観測期間中に得られた各種観測資料の解析を行った。 黒潮に隣接する水平渦が黒潮フロントの維持機構に果たす役割を明らかにするために、黒潮横断定線観測資料を解析し、黒潮フロントの波動に伴う水平渦の伝播による黒潮流量の変動の特性および黒潮流軸位置と流量との間の関係を求めた。フロントの北側には再循環流を伴う反時計回りの水平渦が隣接しており、黒潮フロントが北上する所は水平渦流が黒潮本流に合流する収束域となるという概念図を得た。また、黒潮横断観測定線における10年間のGEK資料の解析から、黒潮フロント域表層の平均水平発散率は-1.3X10^<-5>s^<-1>と見積もられた。 屋久島南西海域におけるHFレーダ観測の結果、水平収束・発散の分布は潮流によって大きく変動するものの、水平収束域は黒潮強流帯の北縁に沿って帯状に分布するのではなくて、発散域と交互に水平規模2〜4kmのパッチ状に分布し、水平収束域での25時間平均水平発散率は-1.7X10^<-4>s^<-1>に達することが判明した。また、フロントが屋久島南西海域を北上する時にフロント北側で水平収束率が大きくなること、およびフロント北側では反時計回りの渦が卓越することが確認された。
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