研究概要 |
本年度は従来の観測結果をとりまとめて、重力波活動度の緯度変化を明らかにした。また、大気重力波の励起機構について中緯度と赤道域での相違に着目して比較研究を行った。 当センターが信楽(35°N,136°E)で運用しているMUレーダーを用いて、数年にわたって毎月数日づつ行われた観測結果の統計解析から、信楽上空の下部成層圏の重力波エネルギーの季節変化はジェット気流の活動と大変良い相関があり、冬期の最大値を示す明らかな一年周期変化をすることがわかった。さらに詳しく解析すると、比較的短周期(5分-2時間)の重力波はジェットのピーク付近で励起され、一方長周期(2-21)成分は対流圏下部で、おそらく背景風と地形との相互作用によって生成されていることが示唆された。一方、赤道域の重力波の特性を明らかにするために、インドネシアの東部ジャワ(7°S,113°E)において、小型気球に搭載したラジオゾンデを用いて観測された結果と対比して、特性の相違を研究した。背景風が小さい赤道域では、活発な積雲対流による重力波励起が重要であることが示唆された。 ところで、中間圏高度では重力波エネルギーは、夏至・冬至にピークを示す半年周期変化を顕著に示した。一年間にわたる信楽(35°N)とサスカツーン(52°N)との協同観測から、中間圏の風速分散値は前者における方が一般に大きいことが分かり、年間平均での比は約1.6であった。また、信楽とアデレイド(35°S)の比較では、重力波エネルギーは夏半球の方が冬半球より大きかったが、それぞれの位置での夏期・冬期同志を比較すると同程度の差が得られた。
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