研究概要 |
この研究では、大気動力波の励起・伝搬・減衰過程の特性について、我々が過去数年間にわたって行ってきた観測結果の解析をもとに、最新の知見をまとめることを目標とする。 まず観測結果を解釈する際に必要となる大気重力波の線形理論を略述し、これをもとに重力波による風速・温度変動の周波数・波数スペクトル表記についてまとめる。とりわけ、飽和した重力波に関する鉛直波数スペクトルに注目し、理論的研究の経過を詳説し、観測結果との比較を報告する。さらに重力波の励起機構、上方伝搬する動力波による運動量輸送や乱流生成についての観測結果を紹介する。またグローバルな比較観測から、重力波特性の高度・緯度・季節変化についてまとめる。 ここで取り扱う観測結果は、主として当センターが信楽(35°N,136°E)で運用しているMUレーダー・流星レーダーならびに小型気球に搭載したラジオゾンデによって得られたデータを中心とし、さらにオーストラリアのアデレイド大学(Adelaide:35°S,139°E)、あるいはカナダのサスカチュワン大学(Saskatchewan:52°N,107°W)が行っているMF(中波帯)レーダー観測との比較研究、宇宙科学研究所によって内之浦(31°N,131°E)から発射された気象ロケットとの協同観測の結果を考察する。また、フランスのオートプロバンス(Haute Provence:44°N,6°E)や筑波の国立環境研究所におけるライダー観測の結果も参照する。こういった中緯度域の研究に加えて、赤道域での重力波の特性を研究するためにインドネシアの東部ジャワ(7°S,113°E)にて行ったラジオゾンデを用いた集中観測の結果も紹介する。
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